さあ寝よう

宵っ張りの朝寝坊による、徒然なるひとりごとのブログ

スーツを着た鬼のお兄さん

今週のお題「鬼」

昨年の2月、鬼を見かけた。スーツを来たお兄さんだった。場所は確定申告の申告会場である。
私はこの年初めて白色申告をしに来た。事前に必要書類を仕上げて来たものの、なにぶん初めてで勝手がわからない。不安になって書類の書き方が合っているか会場の係員に尋ねた。すると青色申告コーナーへ案内された。そこで私が見た光景は、税務署のお兄さんの厳しい追及に遭う中年のご婦人の姿だった。

「この雑費は何ですか?これは?これも!」

二人の間の長机には申告書類と領収書の束が置かれている。お兄さんは領収書を指差してご婦人を問い詰めていた。気のせいだろうか、お兄さんは顔に薄ら笑いを浮かべているように見えた。まるで猛禽類が獲物を弄んでいるようである。対してご婦人の顔は真っ赤に紅潮し、ふるえながら大粒の汗をかいていた。捕食者に捕らえられて身動きできない小動物のようである。ご婦人は答えられないのか答えたくないのか、はたまた緊張で声を発することができないのか、私にはわからなかったが、無言だった。このふたりのために青色申告コーナーは緊張に包まれていた。
…怖い。ご婦人をいまにも食べちゃいそうなお兄さんが鬼に見えた。あいつにつかまったら逃げられない。なぜならここは鬼側の縄張りだから。鬼に貢ぎ物を申し出て納める約束をするまで、ここから出られない。私も緊張が高まった。

あれは戦慄の申告会場だったなあ…。もう2月だ。そろそろ確定申告の時期だ。今年もまた、鬼のいるあの場所へ行かなければならない。なにせ納税は国民の義務ですからね。